疾患説明

疾患別説明

頻尿 夜間頻尿

「尿が近い」「尿の回数が多い」といった症状を頻尿といい、夜間就寝してから朝起きるまでの回数が多いものを夜間頻尿といいます。一般的に頻尿は、起きている間に行く尿の回数が1日8回以上と定義されています(夜間頻尿は寝ている間に行く尿の回数が2回以上と定義されています)。頻尿の原因は様々ですが、前立腺肥大症・過活動膀胱・神経因性膀胱(残尿が多い状態)・多尿・心因性・尿路感染・腫瘍・炎症・心因性などが原因として考えられます。夜間頻尿に関しては不眠の影響を受けることもあり、状況によっては睡眠時無呼吸症候群の精査が必要です。頻尿の理由に関しては、原因が多岐にわたるため、それぞれの原因にあわせて治療を行うことが重要になります。

尿失禁

自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことです。失禁の種類は以下の4つに分類されます。これらが複合的に罹患している場合もあります。

①腹圧性尿失禁

重いものを持った時、くしゃみや笑った時など、お腹に力が入った時に尿が漏れてしまう状態です。尿道括約筋を含む骨盤底筋群の筋力の低下が原因とされています。治療としては薬物療法のほかに骨盤底筋体操による筋力アップや体重減少で症状の改善がみられることがあります。それでも効果不十分で、日常生活に支障をきたすような場合には、手術の適応となってきます。

②切迫性尿失禁

急に尿がしたくなって(切迫感)、我慢できなくなり漏らしてしまう状態です。脳の障害により起こることがありますが、多くは原因がはっきりしません。男性では前立腺肥大症、女性では膀胱瘤・子宮脱といった骨盤臓器脱が切迫性尿失禁の原因となることがあります。治療としては薬物治療、骨盤底筋体操や飲水コントロール、膀胱訓練などの行動療法も効果的といわれています。

③溢流性尿失禁

自分でしっかり排尿ができないため残尿が多く、膀胱が尿で充満した状態から少しずつ尿が漏れでてしまう状態です。男性の前立腺肥大症や膀胱の機能不全である神経因性膀胱が原因としてあります。治療としては排尿を促す内服を処方しますが、膀胱機能がほとんどない状態であれば尿道カテーテル留置を行うこともあります。

④機能性尿失禁

身体運動機能や認知機能の低下が原因で尿が漏れでてしまう状態です。治療として薬物での効果の期待は難しく、介護や生活環境の見直しが必要となってきます。

尿路感染症

急性膀胱炎

「尿の回数が頻回になった」「下腹部に違和感がある」「残尿感がある」「血尿がでた」といった症状が急に出現します。細菌感染によるものがほとんどであるため、尿検査にて尿中の白血球増加を認めます。治療は抗生剤の内服で、数日は水分摂取を心がけていただきます。

急性腎盂腎炎

急性膀胱炎は膀胱内の細菌感染による炎症の状態ですが、その感染が腎臓まで広がったものを急性腎盂腎炎といいます。症状は発熱、ならびに側腹部から背部にかけての巧打痛です。重症化した場合には、抗生剤内服では効果不十分であるため、入院施設のある病院へ緊急入院の上、抗生剤の点滴治療を行っていただくこともあります。

急性前立腺炎

細菌感染により前立腺が炎症を起こした状態です。症状としては、発熱とともに排尿困難、排尿時痛、排尿後痛、残尿感といった排尿症状が出現します。治療は基本的には抗生剤の内服となりますが、重症化した場合には、入院して点滴の治療が必要となることがあります。

精巣上体(副睾丸)炎

精巣上体(副睾丸)は精巣に付着した陰嚢内の器官で、尿道からの細菌感染が広がると、この精巣上体(副睾丸)に炎症を起こすことがあり、それを精巣上体(副睾丸)炎といいます。症状は精巣上体(副睾丸)の腫れと痛みで、発熱を伴うことがあります。治療は急性前立腺炎と同様に抗生剤での治療となります。重症化した場合には、入院して点滴の治療が必要になることがあります。

性行為感染症(クラミジア 淋病)

性器クラミジア

クラミジアはすべての性感染症のうちで最も頻度が多いとされています。性器クラミジア感染症は、クラミジアが性行為により感染し、男性では尿道炎と精巣上体炎を、女性では子宮頸管炎と骨盤内炎症性疾患を発症します。近年ではオーラルセックスによる咽頭感染も増えています。

クラミジアは感染から1~3週間後に発症します。男性の場合、尿道炎症状として軽度の排尿時痛(違和感)、サラサラした尿道からの浸出液がみられたりするのが一般的ですが、一部、症状がでない方もいらっしゃいます。感染がひろがると精巣上体炎になり、発熱と精巣上体の発赤・腫大・疼痛が出現します。一方、女性は子宮頸管炎となることが多く、ほとんどは無症状ですが、粘液性分泌物(おりもの)の増加、性交時痛・出血、下腹部痛といった症状がみられることがあります。

検査として、男性は尿検査、女性は子宮頸管擦過検体を採取し、クラミジアの精密検査を行い診断します。女性の場合、当院で検査を行っておりませんので、他院の婦人科をご紹介させていただいています。

治療は抗生物質の内服をします。内服終了後、クラミジアの菌が完全に消えたかどうかを再度検査して確認いたします。

淋病

性器クラミジア感染と同様、頻度が高い性感染症のひとつです。淋菌もまた性交渉やそれに準じた行為で感染します。男性では尿道炎と精巣上体炎を、女性では子宮頸管炎と骨盤内炎症性疾患を発症します。また淋菌性尿道炎の20~30%は性器クラミジアの混合感染があるといわれております。潜伏期間は2~7日程度と性器クラミジアより早く発症します。

男性では尿道炎症状が主となりますが、膿性の浸出液、激しい排尿時痛が出現し、クラミジア感染症よりもかなり強い症状がでます。一方、女性は子宮頸管炎となり、粘液性分泌物(おりもの)の増加、性交時痛・出血、下腹部痛といった症状を認めることがありますが、多くは無症状といわれています。

検査として、男性は尿検査、女性は子宮頸管擦過検体を採取し、淋菌の精密検査を行い診断します。女性の場合、当院で検査を行っておりませんので、他院の婦人科をご紹介させていただいています。

治療として、抗生剤の注射もしくは抗生剤の内服治療を行います。

前立腺肥大症

前立腺は男性特有の臓器です。膀胱の下にあり、尿道を取り囲むような形態をしています。若い成人男性ではクルミ程度の大きさ(15~20cc)ですが、年齢とともに前立腺内の細胞数が増え、徐々に前立腺の体積が大きくなってきます。50歳を超えてくると前立腺の肥大とともに排尿症状が出現してくる方が増え、自覚症状がある場合は治療の対象となってきます。症状としては、「尿が出にくい」「尿が細い」「尿の勢いがない」といった排尿症状、「尿の回数が増えた」「夜に排尿で起きる回数が増えた」「尿が我慢できない」といった蓄尿症状、「尿が残った感じがある」「すっきりしない」といった排尿後症状があります。前立腺肥大症があり、このような症状が続くようであれば、薬の内服を検討していきます。内服治療にて効果がない場合は、手術にて前立腺の切除をすることもあります。

過活動膀胱

過活動膀胱は尿意切迫感(急に我慢できないような尿意を自覚すること)を有する状態です。時に頻尿や失禁を伴うこともあります。過活動膀胱で悩んでいる方は、40歳以上になると、7人に1人の割合で、この病気に罹患しているとの報告があります。原因としては加齢による骨盤底筋の機能低下、脳・神経の病気、狭心症や不整脈、脊髄や脊椎の病気、糖尿病などが挙げられます。多くの効果的な内服薬がございます。尿意切迫感を起こす他の病気がないかを精査したうえで、内服加療および膀胱訓練を中心に加療をすすめていきます。

慢性前立腺炎

慢性的に前立腺が炎症を起こしている状態で、多くは非細菌性(細菌感染のない状態)のものです。20−30代の男性に多く、症状としては下腹部や鼠径部、尿道、陰嚢、会陰部の違和感、排尿障害(尿勢の低下や頻尿など)、射精時痛などが認められます。尿検査にて細菌感染の可能性が低い場合、治療としては植物製剤や漢方薬、消炎鎮痛剤などの処方を行います。会陰部の持続的な圧迫(自転車・バイクの運転、長時間の車の運転やデスクワークなど)、疲労、ストレス、飲酒、冷えといった生活習慣が症状悪化の原因となります。これら生活習慣の改善が重要です。また、症状は改善と増悪を繰り返すことが多いです。加療を焦らず、医師と相談しながら、症状を改善させていきましょう。

尿路結石(腎臓結石 尿管結石)

尿路結石は腎臓~尿管~膀胱~尿道に至る尿の通り道(尿路)に結石が生じる疾患です。男性で7人に1人、女性で15人に1人が一生に一度は尿路結石にかかると言われており、その頻度は昔に比べて増えております。男性は30‐40歳台、女性は50歳台に多くみられます。

通常、尿路の結石は腎臓で作られ、それが尿管に落ちた時に激しい症状が出現します。その症状としては背部~側腹部にかけての疝痛発作(突然の激しい痛み)と肉眼的血尿が一般的です。嘔気を伴うこともあり、また膀胱近くの尿管結石では、残尿感や頻尿といった膀胱刺激症状が出現することがあります。

結石の多くは尿検査、超音波検査、レントゲン検査から総合的に診断がつきますが、稀にレントゲン陰性の尿路結石(尿酸結石、シスチン結石等)もあることから、最終的にCTで診断されることもあります。

結石発作の治療としては、まずは鎮痛剤の坐薬・点滴、鎮痙剤の投与を行い、痛い部位を温めていただくことで、痛みを軽減させます。症状は発作的なものなので、一度痛みが治まると、多くは今までの症状がうそのように状態が改善します。ただし、その発作を繰り返すことがあります。

尿路結石は結石の大きさや場所により、治療方針が異なってきます。

10mm以下の尿管結石の場合、水分摂取と尿管を拡張させる薬などを内服していただき、まずは自然排石(尿とともに体外に排出)すること目指します。大きい尿管結石や自然排石が困難な場合は、破砕手術の可能な近くの専門病院へ紹介させていただきます。比較的小さな腎結石に関しては症状がなければ経過観察を勧めさせていただきます。発熱を伴う尿管結石、また同時に両側の尿管に結石がつまってしまう場合は緊急で処置が必要となるため、早急に総合病院へ紹介させていただきます。

間質性膀胱炎

膀胱に原因不明の炎症が起こり、それに伴い頻尿や尿意切迫感、膀胱痛などの症状を呈する疾患です。間質性膀胱炎は非細菌性の慢性炎症であり、急性膀胱炎でみられるような細菌感染は通常ありません。症状として、軽度のものであれば頻尿や膀胱の違和感程度ですが、症状が強くなると、蓄尿時につよい膀胱痛・会陰部痛や切迫感を伴う頻尿(過活動膀胱と同様の症状)を訴えます。間質性膀胱炎が疑われた場合は、膀胱鏡検査を行い、五月雨様出血やハンナ—潰瘍(膀胱粘膜の亀裂)を確認します。治療法としては、内服治療(三環系抗うつ薬・抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬・ステロイド・鎮痛薬等)、麻酔下水圧拡張、電気刺激療法、膀胱注入療法、外科的治療などが行われます。肉体的・精神的ストレス、カリウム含有食品(柑橘類、チョコレート、カフェイン等)、香辛料、たばこ、アルコールなどが症状を悪化させてといわれているので、生活の中でなるべくそれらを避けるようにしていきます。

前立腺癌

近年、前立腺癌は最も増加している癌のひとつとして注目されています。前立腺癌患者の増加の原因としては「高齢化」「食生活の欧米化」「PSA(前立腺特異抗原)検査の普及」が挙げられます。また前立腺癌は遺伝と関連があるため、父親や兄弟に前立腺癌の方がいる場合は前立腺癌になるリスクが高いと言われています。

スクリーニング検査(前立腺癌の可能性がある人をみつける検査)として、採血で調べるPSAという項目があります。一般的にはPSAの値は4ng/mL以上で異常値となり、高ければ高いほど前立腺癌の可能性が高くなります(年齢階層別基準値では50歳~64歳でPSA3.0ng/mL以下、65歳~69歳でPSA3.5ng/mL以下、70歳以上でPSA4.0ng/mL以下)。ただPSA高値だからといっても必ずしも癌ではなく、肥大症や炎症といった良性疾患でも高値になることがあります。もしPSAが高いという場合は、ご本人と相談のうえ、PSAの再検査、直腸からの診察、状況によってはMRIの撮影を考慮し、前立腺生検(前立腺組織を針で採取する検査)の施行を検討します。当院では日帰りでの前立腺生検を行っております。生検にて前立腺癌の診断がついた場合、癌の転移評価を行った後に治療方針を決めていきます。

治療としては前立腺全摘(開腹・腹腔鏡・ロボット支援)や放射線治療(外照射治療・組織内照射治療・重粒子線治療)、内分泌療法(ホルモン療法・外科的去勢手術)などがあり、癌の悪性度や転移の有無、患者さんの状況(年齢、合併症等)を考慮して検討してきます。近年では、癌がみつかったとしても、悪性度が低い場合は積極的経過観察(active surveillance)といって無治療で経過をみていくことがあります。治療方針にあわせて、しかるべき医療機関をご紹介させていただきます。治療方針に関するセカンドオピニオンの希望があれば、お気軽に担当医にご相談ください。

尿路悪性腫瘍(膀胱癌 尿管癌 腎盂癌)

尿路の表面にある粘膜(移行上皮)からできる癌が一般的です。尿の通り道に癌ができるため、症状としては肉眼的血尿になりやすく、その多くが無症候性(痛みなどの症状がない)です。
検査としては尿細胞診検査、超音波検査、膀胱内視鏡検査を行い、必要に応じてCT検査を行います。

癌を疑う腫瘍があれば、治療は手術となります。膀胱腫瘍であれば、まずは経尿道的切除を行います。進行癌であれば、その後に膀胱全摘(膀胱をすべて摘出する手術)や抗がん剤治療を検討します。尿管癌や腎盂癌に関しては、転移所見がなければ腎尿管全摘(腎臓と尿管をすべて一塊に摘出する手術)が一般的です。

症状がない肉眼的血尿が出た時は、癌を疑った早めの精査をお勧めします。検査の結果、手術が必要な場合は、近くの手術可能な病院へご紹介させていただきます。

精巣腫瘍

精巣腫瘍とは男性の精巣(睾丸)にできる腫瘍で、20−30歳台の若い人に多いとされています。発生率は10万人に1−2人と稀な疾患ではありますが、多くは悪性で、比較的進行が早いタイプが多いことが特徴です。精巣腫瘍にかかる危険因子として、停留精巣の既往や遺伝的要因等があるといわれています。

症状としては痛みを伴わない陰嚢内にある精巣(睾丸)のしこりや腫大が一般的です。痛みを伴うケースもありますが、痛みは軽度(違和感程度)のことが多いです。

検査は精巣の超音波検査、採血による腫瘍マーカー(LDH、AFP、HCG)検査を行うことにより診断します。精巣腫瘍が疑われた場合は早期の手術(高位精巣摘出)を検討しなければならないため、早急に近くの専門病院へご紹介させていただきます。

腎細胞癌

腎臓にできた悪性腫瘍のことで、およそ10万人に4−5人程度の方に発症します。以前は血尿、腹痛、腹部の腫瘤触知などの症状があり、癌が大きくなってから発見されるケースが多かったのですが、最近は人間ドックや別の病気を調べた検査でたまたま腫瘍が見つかり、比較的早期の状態で見つかることが増えています。検査は簡便に行える超音波検査を最初に行いますが、癌の疑いが強いようであれば造影CT検査を行います。これらの検査でも癌かどうかの判断が難しい場合は、腎腫瘍生検を行うことがあります。

腎細胞癌は他の癌とは違って抗がん剤や放射線治療が効きにくいため、手術が基本となります。精査や手術が必要な場合は、近くの専門病院を紹介します。

LOH(late onset hypogonadism)症候群

男性が年をとることでテストステロン値が低くなることにより起こる症候を言い、一般的には男性更年期障害とも言われています。症状としては、うつ・性腺機能低下・骨粗鬆症・認知機能低下・心血管疾患等が出現します。診断は血中遊離テストステロン値を測定し、それが低値であれば、治療を検討していきます。治療としてはテストステロン補充療法を行いますが、当院ではエナルモン筋肉注射のみ行っております。またLOH症候群の治療に関しては保険外診療(自費診療)となり、基本的に医療費はすべて自己負担となります。詳しくは担当医に確認してください。

骨盤臓器脱

膀胱・子宮・直腸といった骨盤臓器が膣の入口から飛び出てきてしまう状態のことをいいます。膀胱が落ちれば膀胱瘤、子宮が落ちれば子宮脱、直腸が落ちれば直腸瘤と呼び、1つの臓器だけが落ちてくることもあれば、複数の臓器が落ちてくることもあります。骨盤の底には子宮、膀胱、直腸などの臓器を支えている筋肉や靱帯があり、腹圧により臓器が骨盤外に出ないように支えています。お産の経験や年齢を重ねていくとこの支えが緩み、子宮や膀胱、直腸が骨盤の中から膣に下がりやすくなります。慢性的な咳や便秘を繰り返す方、仕事などでいつも重い荷物を持っている方、肥満体型の方なども、腹圧がかかりやすいために骨盤臓器脱になりやすいといわれています。

症状は、陰部下垂感・陰部になにかピンポン玉のようなものが触れる・座るとボールの上に座っている感じがする・陰部の異物感といった典型的な症状や、トイレが近い(頻尿)・尿が出にくい・排尿してもすっきりしない(残尿感)・尿が漏れてしまう・便秘などといった膀胱や直腸に関連した症状が出ることもあります。

検査としては、尿検査、残尿検査、診察台での視診があり、場合によりMRI検査を行うことがあります。

治療としては保存的治療(骨盤底筋体操、ペッサリーなどの膣内装具)や外科手術があります。専門的な治療が必要な分野であるため、手術が必要な場合は治療可能な施設へご紹介させていただきます。